若年性認知症を識る

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目次

若年性認知症とは 若年性認知症の原因 若年性認知症の症状 若年性認知症の医療機関 若年性認知症の検査 若年性認知症の治療 若年性認知症者が利用できる制度 若年性認知症者のための就労支援

若年性認知症とは

若年性認知症とは、18歳から64歳までに発症した認知症性疾患(アルツハイマー型、脳血管型、前頭側頭型、レビー小体型など)の総称。患者数は日本全体で約4万人といわれています。社会的役割が大きい世代であり、特に働き盛りの男性の場合には、経済的問題が大きくなります。また、家庭内の多くの役割と介護を配偶者が一人で負うため、老年期認知症と比較すると介護負担が大きいといわれます。(2009年厚生労働省実態調査)
若年性認知症は、デイサービス・ショートステイ・グループホームなどの介護保険制度を利用できます。しかしこれらのサービスは、高齢者中心であるため、当事者が馴染まずに帰ってきてしまうことがよくあります。また、体力もあり広範囲に歩き回る場合があり、マンツーマンの対応になること、興奮の度合いも大きいなどにより介護者の負担が大きいと言われます。高齢者と比較して、介護者が抑うつになるケースも多いという調査結果があります。

*「若年性認知症」の人は、最初に職場において異変に気がつくことも多く、職場内での正しい理解と支援が必要とされます。東京都福祉保健局から産業医及び企業団体の人事・労務担当者等を対象に 若年性認知症ハンドブック(※pdfデータが重いため、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。予めご了承ください)が刊行されました。若年性認知症に関する基礎知識や、各種支援制度について掲載しています。

*多様な原因疾患と社会的課題の多い若年性認知症の個別ニーズに対応した相談支援が行えるよう、地域で若年性認知症の相談支援を行う窓口(主に地域包括支援センター)となる専門職を対象として 東京都若年性認知症相談支援マニュアル(※pdfデータが重いため、ダウンロードに時間がかかる場合がございます。予めご了承ください)を作成しました。支援者の方々はどうぞご活用ください。

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若年性認知症の原因

若年性認知症の原因となる疾患には、以下のようなものがあります。

●血管性認知症

脳卒中(脳梗塞や脳出血)などに引き続いて起こります。若年性認知症では最も多い疾患です。意識障害、言語障害、麻痺その他の急性器質性症状群と呼ばれる一群の症状を引き起こします。

●アルツハイマー型認知症

アミロイド蛋白という異常な蛋白が沈着して脳全体の神経原線維変化を引き起こします。時間や場所がわからない、自発性低下、抑うつ、判断力の低下、など様々な認知障害を引き起こす病気です。

●前頭側頭型認知症

脳の前方部分(前頭葉や側頭葉)が縮むことにより起こります。注意の欠陥、性格変化、パーキンソン症状、社会規範からの逸脱行為などの症状を引き起こします。

●レビー小体型認知症

脳の中にレビー小体という異常な蛋白がたまり、脳の神経細胞が徐々に減っていく疾患です。認知機能の変動、幻視、パーキンソン症状などの症状を引き起こします。

若年性認知症の場合、このうち約40%が血管性認知症、約25%がアルツハイマー型認知症、その他の認知症が約35%という割合で、血管性認知症とアルツハイマー型認知症で全体の約65%を占めています。また、頭部外傷後遺症やアルコール性認知症などの外的要因から生じる認知症が見られることが、高齢者の認知症と異なります。前頭側頭型認知症も50台が好発年齢となっています。

若年性認知症の原因となる疾患の種類と比率の説明画像

出典: 厚生労働省 若年性認知症の実態等に関する調査結果

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若年性認知症の症状

認知症の症状には、中核症状とそれにともなって出現する周辺症状(BPSD)があります。

●中核症状

脳の神経細胞が壊れることによって起こる中核となる症状です。何度も同じ話を繰り返す(記憶障害)、順序立てた行動ができない(実行機能障害)、馴れた道で迷う(見当識障害)、正しく服を着られない(失行)、道具の使い方がわからない(失行)、ものの名前がわからない(失語)などがあります。

●周辺症状(BPSD)

中核症状にともなって出現する周辺症状(BPSD = Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)は、暴言や暴力、興奮、抑うつ、不眠、昼夜逆転、幻覚、妄想、せん妄、徘徊、もの取られ妄想、弄便、失禁などで、生活の質を低下させ介護者の大きな負担となります。中核症状とは異なり、早期の適切な治療や質の高いケアで症状を軽減することができます。
若年性認知症の中核症状と周辺症状の説明画像

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若年性認知症の医療機関

1. かかりつけ医

かかりつけ医がいる場合は、相談した上で認知症の専門医を紹介してもらうとよいでしょう。職場の産業医から専門医につなげてもらうことも可能です。

2. 窓口に相談

・市区町村の役所の:「認知症相談窓口」「高齢福祉課」などに相談する
・地域包括支援センターに相談する 詳しくはこちら
・当若年性認知症総合支援センターに相談する 詳しくはこちら
・地域の相談窓口で医療機関を紹介してもらう

3. 認知症に詳しい医療機関

・認知症疾患医療センター(東京) 詳しくはこちら
・認知症専門外来/物忘れ外来( 公益社団法人日本老年精神医学会 日本認知症学会) 詳しくはこちら
・認知症サポート医(東京) 詳しくはこちら

※認知症が診療できる診療科は神経内科、精神科、脳神経外科、内科などです。
医療機関を受診する場合は、普段気になっていることをメモしておきましょう、本人も含め家族全員で、情報を共有しておくとよいでしょう。

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若年性認知症の検査

●問診

まずは問診を受けます。日頃気づいたこと、気になっていることなどをメモしておきましょう。

●長谷川式認知症簡易評価スケール

簡単な質問形式の検査で、その答えで認知機能が低下しているかどうかを判断します。 名前や生年月日、簡単な計算、記憶力を試すものなど。30点満点中20点以下だと、認知症の疑いが強いとされています。

●ミニメンタルステート検査(MMSE)

長谷川式と同様に質問形式の検査です。図形描写など構成的機能の確認ができ、22〜26点で軽度認知症、21点以下で認知症の疑いが強いとされています。

●ウェクスラー記憶検査(WMS-R)

総合的な記憶検査です。言語や図形を使った問題で記憶力や集中力、注意力などを評価します。

●画像検査

CT、MRI、SPECT(脳血流シンチグラフィ)などで脳の状態を検査します。脳の萎縮の部位・程度、血流などを検査することで、疾患のタイプや進行度を調べることができます。

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若年性認知症の治療

ほとんどの認知症は根治できないのが現状ですが、薬物療法、回想法や音楽療法などのリハビリ、適切なケアで進行を遅くしたり症状を軽くすることが可能。また適切なケアや家族の対応は、病状を悪化させないばかりではなく介護者の負担を軽減することにも繋がります。
薬物療法に使用される薬物は、現在4種類。アリセプト(ドネペジル)、メマリー(メマンチン)、レミニール(ガランタミン)、リバスタッチ・イクセロンパッチ(リバスチグミン)です。
また、周辺症状(BPSD)が激しい場合には、抗精神病薬、抗不安薬、抗うつ薬、睡眠導入剤、漢方薬などが処方される場合もあります。
水頭症、慢性硬膜下血腫などの疾患は早期発見、早期治療により治癒できる場合があります。

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若年性認知症者が利用できる制度

経済的な負担を軽減できる制度が数多くあります。それぞれ内容が複雑で、専門的な場合がありますので、まずは当センターの専門窓口にご相談されることをお勧めいたします。

❶ 介護保険制度

65歳以上の人が対象ですが、若年性認知症と診断された人は40歳以上であれば、利用が可能。介護保険サービスを利用するには、要介護(要支援)認定を受ける必要があります。事前に調査を行い、介護の必要度を判定し要介護度が決定します。
認定後、居宅サービス、施設サービス、地域密着型サービスなどのさまざまなサービスが利用が可能。要介護度によって、介護保険サービスを受けられる限度額に違いがあります。
サービス内容は種類も多く多岐に渡ります。
当センターでは、通所介護(デイサービス)の施設として、若年性認知症と高次脳機能障害に特化した専門スタッフによるサービス”いきいき*がくだい”を運営しております。詳しくは こちらをご覧ください。

介護保険制度のサービス内容と利用開始までの流れの説明図

❷ 障害者総合支援法

介護サービスでは受けられない自立訓練や就労継続支援、同行支援(移動支援)などのサービスを利用できます。専門スタッフに相談の上、有効に活用しましょう。
障害者を対象としたサービスは自立支援給付と地域生活支援事業によって構成されます。

・自立支援給付
障害の程度や、利用者の意向を踏まえたサービスが提供されます。

・地域生活支援事業
内容は市区町村によって異なります。詳しくは市区町村の障害者福祉担当窓口にご相談ください。

障害者総合支援法のサービス内容と利用開始までの流れの説明図

❸ 障害年金(障害基礎年金/障害厚生年金)

障害基礎年金と障害厚生年金を受給することができます。※初診日から1年6ヶ月経った日、もしくは症状が固まった日が障害認定日となります。詳しくは 日本年金機構のホームページをご覧ください。

❹ 自立支援医療制度(精神通院医療)

医療機関、薬局の窓口で支払う医療費の自己負担が1割に軽減されます。医療機関または、市区町村の障害福祉課などにご相談ください。詳しくは 自立支援医療(精神通院医療)の概要 をご覧ください。

❺ 障害者手帳

精神障害者保健福祉手帳 身体障害者手帳(血管性認知症やレビー小体型認知症など身体症状がある場合)を取得できます。※初診日から6カ月が経過した時点での障害の程度で決定されます。詳しくは、市区町村障害福祉課などにご相談ください。

❻ 医療費控除

1年間に負担した医療費の総額が一定額を超えている場合には、「医療費控除」が受けられます。詳しくは、市区町村医療保険課などにご相談ください。 国税庁ホームページ

❼ 高額療養費

医療機関、薬局で支払う自己負担額が1カ月単位で一定額を超えた場合、その超えた金額が支給されます。詳しくは、市区町村医療保険課などにご相談ください。 全国健康保険協会のホームページ

❽ 高額介護サービス費

1カ月に支払った介護サービス費の自己負担額の合計額が、一定金額を超えた場合は、その超えた分が支給されます。詳しくは、市区町村介護保険課などにご相談ください。 厚生労働省ホームページ

❾ 高額医療、高額介護合算療養費

1年間に医療保険と介護保険の両方に自己負担があり、その合計が一定の額を超えた場合は、その超えた分が支給されます。詳しくは、市区町村介護保険課/国民健康保険課などにご相談ください。 厚生労働省ホームページ

❿ 特別障害者手当

一定の条件を満たす場合、特別障害者手当支給される場合があります。詳しくは、市区町村障害福祉課などにご相談ください。 厚生労働省ホームページ

⓫ 成年後見制度

判断能力が不十分な人を法律的に保護し、支援する制度です。財産管理や契約等の支援をします。詳しくは 法務省ホームページをご覧ください。

⓬ 地域福祉権利擁護(福祉サービス利用援助)

判断能力が十分でない方を対象とした制度です。福祉サービス利用援助、日常的な金銭管理サービス、重要書類の預かり等の支援を受けられます。詳しくは こちらをご覧ください。

⓭ その他の経済的支援

保証機関で団体信用生命保険に加入している場合、住宅ローンの支払が免除されることがあります。また、支払いが困難になった場合には、国民年金保険料の免除制度があります。
その他 生活福祉資金貸付制度、生活保護制度 日本学生支援機構奨学金制度が利用できる場合があります。

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若年性認知症者のための就労支援

様々な就労支援のための制度やサービスがあります。

❶ 傷病手当金

全国健康保険協会(協会けんぽ)や健康保険組合に加入している事業所にお勤めの方が、疾病やけがなどで給与をもらえない場合に生活保障をするための制度です。最長1年6か月、標準報酬日額の3分の2の金額が支給されます。詳しくは 全国健康保険協会ホームページ をご覧ください。

❷ 雇用保険(失業等給付)

再就職する意思があり、求職活動をしている人に支給されます。雇用保険の被保険者期間が、退職する前の2年間で12ヶ月以上あることが条件です。詳しくは ハローワークホームページ をご覧ください。

❸ 介護休業制度

家族の介護を行うために、一定期間仕事を休業することができる制度です。延べ93日までの休業を取れます。詳しくは 厚生労働省ホームページ をご覧ください。

❹ その他の機関

市区町村の障害・福祉に関する窓口、障害者就業・生活支援センター、ハローワーク、障害者雇用支援機構、就労移行支援事業所

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東京都若年性認知症総合支援センター

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